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➏ 収支予測は事業を設計するためのシミレーション

「事業戦略と事業計画」の違いのところで、事業計画が銀行や政策金融や投資機関から、融資や投資を受けるためのプレゼン資料という位置づけになっていて、相手に「絶対に売れる!」ことを説得するための「作文」になっていると書きました。

それでは、融資を受ける考えのないあなたには、事業計画は必要ないのでしょうか?

いいえ。事業の収支予測は、戦略と行動を結びつけるシミレーションとして、絶対に必要です。加えて、事業スタート前の準備段階を含めて、あなたの手元資金の出入りを管理する、マネーフロー管理も必須です。それらはあなたの事業経営にとって、命綱ともいえるものです。

収支予測は週単位で原価計算を行う 

作文の事業計画では、事業の収支予測が月次単位で、創業後3年くらいまでの売上と利益の見通しを示すものになっています。これではシミレーションとしては、役に立ちません。シミレーションをするには、週単位で原価計算を行う必要があります。

1か月目収支予測(シミュレーション)の図

上の図がその例です。飲食店の場合で、客席数が10席と小さな店を想定しています。見込客数は平日と週末・祝祭日を区別しているほか、客席数x回転数で算出しています。この店の見込客数の最大値は、10席x3回転=30人です。出資金(資本金)は80万円で、そのほかに融資を受けていて、その毎月の返済額が4万円です。従業員は経営者とその妻、アルバイト1人の合計3人です。料理とお酒などを合わせた客1人当たりの平均単価の18%に原材料費を設定してあります。

このように設定すると、月単位の収益は、基本的に見込み客数を動かすことによって、自動的に算出されます。

創業1か月目の収益は、21万円の赤字でした。これを黒字にするには、見込客数を増やし、かつ客単価を上げる必要があります。

6カ月、12カ月目の収支予測の図

次に、6か月目と12カ月目のシミレーションを示しました。平日、週末ともに客数が増え、マックスの70~80%まで埋まるようになったと仮定しています。すると客単価は、上がっていませんが、14万円の利益が出るようになりました。

ところが12カ月目になると、客数が夜の部でマックスに近いくらいになってしまったので、アルバイトを一人追加し、給与も全体に上げざるを得なくなりました。すると月次で再び5万円以上の赤字となってしまいました。店がにぎわうことは良いことですが、今後は、客単価を上げていかないと利益が出ないことが分かります。

このように、

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収支予測というのは、収支を決定する要素を細かく配分し、客数や賃金や商品単価と原材料費などの変数を変化させて、どういう条件ならば収支をプラスにでき、今後どのような課題を解決していかなければならないかを、見える化するものなのです。

作文との違いが判っていただけたと思います。

ところでアヤメさんの場合は、1年間におよぶコンテンツ戦略の結果、You Tubeのチャンネル登録者数が1万人になり、その人達にFace Bookを通じてアンケートを行ったところ、アヤメさんの「商圏」に、ファンが100人ほど存在することが分かりました。そこでアヤメさんは、この100人を現状でのマックスの見込客と想定して、収支予測を行い、「お花の宅配便」の月次契約(サブスクリプション)の内容を、月額2800円、フラワーアレンジメント5回分と決めたのでした。

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❼ ビジネスモデルを考える

事業戦略は、ここまで「マーケティング戦略」(コンテンツ戦略)➡収支予測(シミュレーション)と進んできて、次はビジネスモデルです。

ビジネスモデルの調整

ビジネスモデルとは、「誰に、どのような価値を、どのように提供して、誰から、いくら、どのようにして受け取るか?」という仕組みのことを言います。価値を提供する相手と、その対価を受け取る相手が違う場合があるので、このように定義しました(自治体から委託を受けて、公の施設を管理運営するようなビジネスがこれに当たります。タクシー会社も昔は、運転手に籠(車両)を貸して、その売上の一部を対価として受け取るビジネスと認識されていたようです)。

コロナパンデミックで、飲食店の多くが長期間、自主休業や営業時間の短縮などを強いられ、店舗での営業から弁当の販売、車上販売に比重を移す例が見られました。これなどは「どのように提供して」の部分の、ビジネスモデルを変更した典型的な例に当たります。ビジネスモデルは固定したものではなく、ビジネスを取り巻く環境に適合するように、チューニング(調整)することができるし、それが必要だということを頭に入れておきましょう。

複数のビジネスモデルの組合せ

ビジネスモデルは、固定したものでないばかりか、単一のものでもありません。複数のモデルを組み合わせることができるし、それが望ましい場合も多くあります。飲食店が店舗内での食事に加えて、デリバリーやテクアウトを組み合わせていたり、美容室が店内でシャンプーやリンスを売っていたり、ハーブオイルのお店が、店舗とネット販売を組み合わせている例が、これに当たります。ビジネスモデルを複数持つことは、もしそれが経営の負担にならないのであれば、会社のリジリエンス(危機に直面した時の対応力、柔軟性)を高めます。

新しいビジネスモデルの創造

再び、アヤメさんの例を思い起こしましょう。アヤメさんは、お花を日常生活にもっと取り入れて、自然との接点を持つことによってもたらされる安らぎや元気を得たいと思っているが、「どうしていいか分からない」潜在顧客がたくさんいると想定しました。そしてコンテンツ戦略の結果、その想定が正しかったことが証明され、そこで「お店の宅急便」という、これまでになかったビジネスモデルを作り上げようとしているのです。

アヤメさんの「お花の宅急便」のように、これまで存在しなかった(少なくとも花屋の業界では)ビジネスモデルを作り上げることほど、競争力をもつものはありません。競争相手がいないのですから。「お花の宅急便」のようなモデルを、サブスクリプションモデル(定額サービスモデル)といいます。最近では、トヨタ自動車もKINTO(新車の定額貸出サービス)というサブスクモデルを開始したのが有名ですね。

産業の歴史、その成長の歴史は、まさに新しいビジネスモデルの創造の歴史といっても間違いありません。エンジンやITといった技術革新は、必ずビジネスモデルの創造を伴いますし、Windowsのサブスクリプションモデルは、クラウドサービス市場全体を拡大させる大きなきっかけになりました。これから事業を始めようとしている方は、サブスクモデルをご自分の事業分野に応用できないか、検討してみることは価値があると思います

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: green-energy.png

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